ダウン症のある
フランスのくらし 日本のくらしVivre avec la trisomie 21 en France et au Japon

1お客様に本物を届けたい!

障がいのある人が働いているお店だからという理由ではなく、提供されている商品やサービスが
素晴らしいから選ばれる、そんなあり方を目指す企業や福祉作業所などが増えています。

カフェで働く風景

障がいのある人たちの働く場としてパリとレンヌに立ち上げられたCafé Joyeuxは、あたたかい雰囲気の素敵なカフェです。こだわって焙煎した豊かな風味のコーヒーを、自家製のペストリーや料理と一緒に楽しむことができます。Café Joyeuxのもう一つの売りは、仕事を心から楽しみ、笑顔でお客さまを迎えるスタッフたち。この一年、Elisaさんは接客を任されるようになり、コーヒーの香りの漂う空間で仲間とと もに働く時間を楽しんでいます。カフェでの仕事に自信がつき、大きく成長しました。

カフェで働く風景

ブルターニュ地方の都市ナントにあるレストランLe Refletでも、障がいのある人たちが美味しい料理を振る舞っています。キッチンやフロアで働くスタッフ11名のうち、ダウン症のある人は7名。心地よく過ごすことができる温かくフレンドリーな昔ながらのレストランで、連日予約が難しいほどの人気店です!

カフェで働く風景
カフェで働く風景

フランスから遠く離れた日本、横浜の権太坂にも障がいのある人たちがコーヒー豆を焙煎しているカフェfe.a coffeeがあります。看板犬ラウジーくんが出迎えてくれるお店では、途上国の小さな農家が大切に育てた豆を丁寧に焙煎し販売しています。ほんの少しの違いでコーヒーの香りや味が変わってしまう焙煎は、繊細な感性を必要とする作業です。「お客様に最高のコーヒーを飲んでいただきたい。」焙煎機を見つめる隼吾さんの目は真剣です。

看板犬
裁縫作業風景
裁縫作業風景

優れたデザインと機能性を兼ね備えた雑貨を制作、販売している事業所も増えています。NPO法人が運営する「杉並いずみ」では、試作を繰り返し、さまざまな商品を開発しています。商品は全て丁寧な手仕事で仕上げ、少しでも歪みがあれば当然やり直し。機織り担当の大内さん、刺し子担当の塚田さんにも妥協はありません。作り手としてのプライドを持って働いています。

カフェで働く風景

従来の福祉の枠にとらわれない新しい試みに積極的な横浜市栄区のSELP・杜は、障がいのある人の就労と生活、社会参加を支援する事業所です。特別支援学校の高等部を卒業した人たちが働く支援部門には、現在、約150人が所属しています。滝澤さんは高校を卒業したばかりの19歳ですが、コミュニケーション能力の高さが評価され、事業所内の店舗だけでなく病院など外部販売も任されています。

カフェ風景

フランスには、民間企業・公的機関に加え、職業訓練や就労支援を行う福祉事業所(ESAT)、従業員のうち障がいのある人が80%以上を占める適応企業(EA)と、働く場が3つあります。適応企業(EA)は、梱包や物流、自動車の部品製造などかなり綿密な作業まで多くの業務を行なっています。また、福祉事業所は、職業訓練とアトリエ(学習やスポーツ活動)以外に、一般企業と連携をし、企業での仕事に慣れるまでの期間、訓練のサポートを行う機能も持っています。最近は、La Poste(郵便サービス)や鉄道会社Airbusなど大企業から直接業務を請け負うところも出てきています。フランスと英国を結ぶ列車ユーロスターで提供される軽食の包装や梱包などの準備を担当する福祉事業所もあります。
フランス同様、日本にも障がいのある人の働く場所が大きく3つあります。民間企業・公的機関、障がいのある人を雇用するために作られた特例子会社、そして、障がいのある人のための事業所での福祉的就労です。福祉的就労には、事業所と雇用関係を結んで働き賃 金が支払われる形と、事業所の利用者として作業を行い、工賃が支払われる形があります。また、福祉事業所で日中活動のひとつとして、軽作業に従事したり、家業の手伝いをしたりするなど、様々な働き方が選択できます。
どのような形であれ、それぞれの企業や事業所は、障がいのある人たちが社会の一員として輝けるよう、業務内容や作業方法を工夫し、日々新しい取り組みに挑戦し続けています。