さあ、赤ちゃんとの生活が始まります。 ダウン症のある赤ちゃんとのくらしは、ダウン症のない赤ちゃんとのくらしと何か違いがあるのでしょうか。
赤ちゃんの生活は、寝て、起きて、飲んで、ウンチをして・・・の繰り返し。それはダウン症のある赤ちゃんも、ない赤ちゃんも同じです。ただ、たとえば母乳やミルクを飲むのが上手ではなかったり、便秘がちだったり、あまり泣かなかったりと、他の赤ちゃんより気にかけてあげなければならないことがいくつか出てくる可能性があります。最初は心配したり、気になったりするかもしれませんが、日々の暮らしのなかで自然に対応できるようになり、気持ちの負担は減っていくはずです。
ダウン症があると、心臓や消化器系の疾患、筋肉の緊張が低くやわらかい、知的障がいなどさまざまな合併症が起こる可能性があり、その対応のために医療的ケアを必要とする赤ちゃんがいます。どの合併症がどの程度の重症度で発症するのかは人によってさまざまです。以前は、心臓や消化器などの内臓疾患によって長期にわたる治療の必要があり、大きくなっても生活に制限が加わることがありました。しかし最近は、手術治療など目覚しい医学の進歩により、多くは乳幼児期に改善するようになっています。また、ウエスト症候群(点頭てんかん)や、環軸椎不安定性(首の1番目と2番目の骨にずれが生じる状態)など、成長の過程で出現する可能性のある合併症に関しては、定期的な観察が必要です。環軸椎不安定性がある場合には、でんぐり返しなど首に負担のかかる運動は避けるよう指示されます。合併症への対応のため、赤ちゃんの時期には、数週間、数ヶ月ごとの診察を指示されることがあるかもしれませんが、通院の頻度は成長とともに減っていくことが多いようです。
ダウン症のある赤ちゃんは、1歳になれば歩き、おしゃべりを始める、といった平均的な成長からは少し遅れるのが一般的ですが、成長のスピードや発達の様子は人によって本当に様々で幅があり、のんびり成長する赤ちゃんも、標準とあまり差がみられない赤ちゃんもいます。また、身体的成長も、ゆっくりすすむことが多いようです。ゆっくりのんびり成長することを残念に思う必要はありません。かわいい赤ちゃん時代を長く楽しめるという考え方もできるのですから。
成長を促す関わりや訓練などを総称して「療育」といいます。乳幼児期には、寝返りやお座り、四つ這いなどを経て正しい姿勢で歩けるようになるための理学療法(PT:Physical Therapy)、着替えや食事、お絵かきなど日常生活の活動で体をうまく使えるようにするための作業療法(OT:Occupational Therapy)、安全に美味しく食べるための摂食訓練や、言語・コミュニケーションの発達を促すための言語聴覚療法(ST:Speech Therapy)、認知機能の発達を促す心理療法などが行われるのが一般的です。また、ダウン症のある赤ちゃんの身体発達を促す「赤ちゃん体操」という運動プログラムもあります。療育を受けるための相談先は地域によってさまざまです。医療機関や、お住いの市区町村の保健福祉の担当部署、地域のダウン症のあるお子さんの「親の会」等にご相談ください