大人になったダウン症のある人たちの暮らしの中心は、学校から、職場や通所先などに移ります。 生活の場の選択肢も広がり、本人や家庭の状況にあわせてさまざまにくらしています。
平成28年4月、障害者差別解消法が施行され、障害があることを理由にサービスを提供しなかったり、差別的に扱ったりすることが禁止されるようになりました。車椅子に乗っている人もスロープがあれば電車に乗れるように、ダウン症のある人たちも、何らかの配慮や手助けがあれば、地域の中で自立した生活を送ることが可能です。また、住むところだけでなく、進学や就職の際にも、どんな配慮があればそこで暮らせるのか、学べるのか、働けるのかを地域や学校、企業と一緒に考えながら、さらに、より良い環境を創り上げていくことができるかもしれません。
これまでは、家庭で生活しながら職場や施設に通い、親や本人の高齢化に伴って施設に入所する人が多かったようですが、最近は、より自立した生活を送るためのグループホームが少しずつ整備されつつあり、若いうちから親元を離れてくらす人が増えています。なかには、一人で部屋を借りて生活している人もいます。
金銭面については、就労による賃金のほか、障がいのある人のための年金制度「障害基礎年金」が利用できる場合があります。
働く場もさまざまです。教育の場を卒業後は、一般企業、一般就労を目指す人たちのための支援施設、福祉作業所などで働きます。賃金は就労先によって数千円から数万円、十数万円までさまざまです。 働く場に関する法制度も年々整備されています。障がいのある人を一定割合雇用しなければならないという法律をもとに、障がいのある人たちと共に働くための環境を整える企業が増えたり、障がいのある人たちに配慮した特例子会社とよばれる関連会社を設置したりするなど、雇用も広がりつつあります。
高校卒業後、大学や短大、専門学校への進学を目指す人もいます。近年、障がいのある人たちのためのオープンカレッジを設置する大学も出始め、現在、十数大学で開講されています。さらに、制度上は大学ではありませんが、知的障がいのある人のためのカレッジを設立する動きもあり、生涯学び続けたいという願いに応える受け皿が広がりつつあるようです。
活動の種類はいろいろありますが、水泳やダンスなど体を使うもの、楽器の演奏や絵画、書道、手芸など芸術や表現に関するものが多いようです。なかには、趣味の域を超えて活動し、広く世界から認められる成果を上げている人もいます。特に、アートの分野で活躍している人が多いようです。また、知的障がいのある人たちのためのスポーツの祭典「スペシャルオリンピックス」の下部組織に所属して継続的にトレーニングをしている人たちもいます。 もちろん、趣味や余暇活動に積極的な人もいれば、自宅でゆっくりしていたいという人もいます。自宅では、好きなテレビやラジオ番組を視聴したり、掃除や料理などの家事を手伝ったり、時には友達や家族と買い物や映画に行ったりして過ごしているようです。また最近は、Facebookやブログなどを通じてコミュニケーションを楽しむなど、インターネットを使って世界を広げている人もいます。
恋愛、結婚については、はっきりとした調査、報告があるわけではありませんが、思春期以降、異性を意識し、付き合い始める人もいるようです。また、数は少ないですが、結婚して二人で生活しているダウン症のある人もいます。今後、生活をサポートする体制が整ってくれば、結婚という道を選択する人も増えてくるかもしれません。